映画館が閉鎖されて、映画業界が大打撃を受けている中で、
今、かなり注目を集めている映画がある。

それが2011年に公開された映画「コンテイジョン」である。

なぜ、10年も前の映画が今になって注目を集めているのかといえば、それはこの映画が、まるでコロナウイルスで混乱する現在の世界の状況を予言したかのような内容の映画だからである。

コンテイジョンの舞台はたぶん2010年ぐらいの世界。
香港出張から帰ったベスは、アメリカのミネアポリス郊外の自宅で倒れ、泡を拭いて痙攣して、救急車で運ばれる。

物語はそこから怒涛の如く展開していく。

この物語には何人もの人物が登場するが、
大きく分けて6つの属性に分けられる。

物語を追いながらそれぞれの生き方を見ていきたい。

1、遺されし者

この物語の主人公はマット・デイモンが演じるミッチという男。
物語の冒頭で死んだベスの夫だ。

さっきまで普通に話していた妻が、倒れて病院に運ばれたと思ったら、その数時間後に亡くなる。

彼は状況が全く理解できない。
それで医師と押し問答しているところに、家政婦から電話がかかってくる。

「息子さんが…泡を吹いて倒れてるんです」

彼の脳裏に最悪の事態がよぎる。
「すぐに救急車を呼べ!」と電話越しに叫んで、彼は駆け出す。

しかし、時すでに遅し。
彼は幼い息子までも失うことになってしまう。

いったいこれはなんなんだ?
何が起こっているんだ?

何がなんだかわからないうちに、
彼は愛する家族を失い、隔離されることになる。

医師たちはベスを解剖した結果や
息子も死亡を見て、すぐに感染症であることに気付き、すぐにWHOやアメリカの各機関が動き出す。

しばらく隔離されていたミッチはどうなったかというと、なぜか彼はそのウイルスに対する抗体を持っていることが判明。
彼だけはウイルスに感染せず、解放されることになる。

しかし、その頃、謎の感染症はすでに世界中に広まっており、WHOによりパンデミックの報告がなされる。

世界が混乱におちいっていく中、ミッチは遺された娘とともに運命に翻弄されながら、必死に生き抜いていく。

2、研究者

この感染症と最前線で戦っていくのが疫病の研究者や医師たちだ。

ここでは4人の研究者がそれぞれの立場でこの感染症に立ち向かう。

1人目はアメリカ疫病予防管理センター(CDC)のエリス・チーバー博士。
アメリカの感染症対策の中心人物だ。

チーバー博士は、感染症の専門家ミアーズ博士を現地に派遣。
ミアーズ博士は現地で感染経路などを次々にあばいていき、対策を打っていく。

しかし、ミアーズ博士はその中で感染。
ゴロゴロと患者が横たわっている体育館に搬送され、その中で毛布にくるまって死んでしまう。

3、陰謀論者

そんな中で
「これは生物化学兵器ではないか?」
と言い出す人たちが出てくる。

ブロガーのアランはその説をネット上で広める。

そして、漢方薬の「レンギョウ」がウイルスに聞くという説を広め、しかもそれを売って儲けようとする。

結局、彼は詐欺の罪で逮捕されてしまうが、それでも彼の熱心な信者たちは彼を信じ続け、保釈金まで払って彼を頼り続けた。

4、惑う者

各都市が封鎖されはじめると、人々は食料品を買い占めたり、なんとかして郊外へ脱出しようとし、大混乱におちいる。

そして高熱にうなされながら「レンギョウ」を求めて薬局に並び、倒れ、息絶えていく人々もいた。

次第に食料が不足し、政府から配給が行われるようになる。

配給を頼って、列に並ぶ人々。
ウイルスにおびえ、情報に惑わされる人々の姿が描かれている。

5、略奪者

そんな中で、お店が襲撃されたり、暴動が起こったりもするようになる。

物語の最後の方ではワクチンが開発されるのだが、そうすると今度はワクチンをめぐる争いが起こる。

そう、ワクチンが開発されても
すぐに全員に行き届くわけではないのだ。

なんとかワクチンを手に入れようと、
研究者たちの自宅を襲撃する者、
人質をとってワクチンを要求する者まで現れるようになる。

6、若き者

そんな人々の心があれすさみ、
荒廃していく世界を描いた映画だが、
そんな中にあっても小さな花は咲く。

主人公ミッチには娘がいるのだが、
その娘のことを思うボーイフレンドも登場する。

彼は娘のことを思って、
家を訪ねてきたりする。

そんな彼に対してミッチは言う。
「ダメだ。今は会わせられない。帰れ」

でも、若い恋心はそんなことでは消えない。
彼は娘のことを思い続けて、
ある日、こっそりお父さんの目を盗んで2人で出かける。

そして、雪の上で大の字で寝転ぶ。
手が触れそうになる。

いや、でも触れちゃいけない。

「ねぇ、多分僕たち、大丈夫だよね。
 感染なんかしてないよね」

彼は意を決してキスしようとする。

が、そこに銃を持ったミッチが
「おい!!!!!てめえ何やってんだ!!!!」
と乗り込んでくる。

まるで今の世界そのもの

ここに描かれているのは、まるで今の世界そのものだ。
10年前につくられた映画とは、とても思えない。

遺された者、研究者、陰謀論者、惑う者、略奪者、若き者、
みんな、それぞれ立場があり、考えがあり、思いがあり、
みんなが必死に生きている。

そして、
世界がどんなに荒んでも、
ウイルスが間をはばんでも、
人は人を求める。

だからこそ
一緒にいること、
つながること、
守ること、
その間の葛藤が生まれる。

この映画ではワクチンが開発されて、
世界は少しずつ元の姿に戻っていく。

この世界はどうなっていくのだろう?