『医療崩壊の危機』
ここ1週間、よくその言葉を耳にするようになりました。
ワイドショーに踊らされているだけだろ
と思う人もいるかもしれません。
でも、ここ10ヶ月はYouTuberとしてずっとコロナの情報をリサーチしてきました。
この10ヶ月間、
朝から晩までコロナのことを考えない日はありませんでした。
そんな私が最近、いろいろなニュースを見る中で、
ちょっと雰囲気が変わってきたなと思っているんです。
具体的には
ここにきて医療体制のひっ迫を訴える知事さんたちが
急に増えてきた感じがしています。
実際はどうなのでしょうか?
そもそも医療崩壊って何?
どうなるの?
というテーマでお話しします。
私は元中学校教師で、
今はビジネス系YouTuber、
SNSコンサルティングの仕事をしています。
また社会科の教員として10年以上教壇に立っていますので、
医学の専門家ではないんですが、
社会的な見地からコロナ情報をまとめて皆様に有益な情報をお届けしています。
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医療崩壊で何が起こるのか?
そもそも医療崩壊医療崩壊と言っても、
じゃあ何が起こるのか?
具体的にわかる人ってどれくらいいますかね?
なんかパニック映画みたいな
「ドクター次から次へと患者が運び込まれてきます!」
「ICUへ運べ。こっちの患者はすぐに人工呼吸器だ」
「もうベッドはいっぱいです!これ以上の受け入れは無理です!!」
「お父さん!お父さん!しっかりして〜!」(救急外来から泣き叫ぶ声)
というようなパニック状態を想像している人もいるかもしれません。
テロ事件が起こったらこういう状況になるかもしれませんが、
現状、日本ではそこまでの状況は考えにくいです。
ただし、第1波の時のイタリア、アメリカでは
これに近い状況があったものと思われます。
じゃあ、具体的に医療崩壊とはどういうことなのかというと、
①病院の受け入れキャパを超える
②コロナ患者の受け入れ先が見つからない
③検診や他の治療が後回しにされる
④治療の優先順位がつけられる
ということです。
①病院の受け入れキャパを超える
まず、最初に病院の受け入れキャパを超えます。
これは病院がコロナ患者で溢れ返るという意味ではありません。
今は軽症者は自宅療養やホテル療養が可能なので、
パニック映画のように病院がコロナ患者で溢れかえって、
至る所から呻き声が聞こえて、
待合室でバタバタ人が死んでいく、というような状況にはならないでしょう。
問題は重症者です。
重症者は入院します。
そして、さらに症状が悪化すると人工呼吸器をつけなければいけなくなります。
じゃあどんどんベッドを増やして、
人工呼吸器もバンバンつくればいい、と思うかもしれませんが、
そうはいきません。
人工呼吸器も重症者用ベッドも管理するためにかなりの人手が必要で
重症者用ベッドは1つ増やすのに、スタッフを5人増員しなければならないそうです。
しかも、重症者はすぐには退院しないので
短期間で重症者がドッと増えたら、ドンドン溜まっていきますよね。
そうして、重症者用の病床が足りなくなり、
現場のスタッフの数も足りなくなっていきます。
ここが問題なんですね。
コロナに感染しちゃいけないとか、
コロナの致死率がどうとか、そういう問題じゃなくて、
短期間でガッと感染者が増えてしまうと、
医療体制がひっ迫される。
「コロナ大したことない」という人は
このへんを理解していません。
②コロナ患者の受け入れ先が見つからない
そうして、スタッフが足りなくなると、
病院の方で新規患者を受け入れられなくなります。
ベッドいつ空くかはわかりません。
例えば、私は静岡市在住なんですが、
私がもしコロナにかかったら静岡市の受け入れ病院に行きますよね。
でも、そこがいっぱいだったら、
「受け入れられません」と言われてしまいます。
じゃあどうするの?
死にそうになりながら、
隣町まで自力で行って、そこで入院しなきゃいけない。
それでも「全然大したことないよ」と言えますか?
静岡県内でベッドを何症用意してます!と言われても、
感染が拡大している地域、特に地方の場合は
すでに限界ギリギリという可能性も出てくるわけです。
③検診や他の治療が後回しにされる
そして、コロナで病院がいっぱいになってくると、
そちらにマンパワーがさかれますから、
緊急ではない検診や、
急を要さない他の病気の治療が後回しにされていきます。
有名なところでは
高須クリニックの高須院長は全身にガンが転移しているにも関わらず、
急を要する状態ではないということで、
「僕の手術は後回しにせざるを得ない」
とTwitterで言っていましたね。
北海道の病院では手術を一旦ストップしている病院もあるようです。
患者の側で、「調子が悪いけど今はちょっと我慢しよう」と判断して
受診しない場合とあると思います。
アメリカでは コロナの感染拡大に反比例して
ガンなどの検診を受ける人が減っています。
また、脳梗塞、心筋梗塞、心不全など、
コロナ以外の病気で入院する人の数が減っているそうです。
これはその病気が減ったということではなく、
事前に発見されて、入院するケースが減ったということです。
④治療の優先順位がつけらる
そして、最終的に医師や重症者ベッド、人工呼吸器などの数が足りなくなると
「誰から治療するか?」
という問題が生じてきます。
病院は普段は早い者勝ちで診てもらえますよね。
それは医師や設備に余裕があるから、
できることなんです。
こちらを治療している間に、
こちらが死んでしまうという状況になったら、
医師は優先順位をつけて治療していきます。
優先順位をつけて治療していくことをトリアージといいます。
例えば、
若者とお年寄りが死にそうになっていて、
人工呼吸器がひとつしかないとなったら、
「こちらの患者さんを治療しましょう」
という判断をしていくことになります。
医療崩壊とはおおよそこのような状況です。
海外の事例
日本はなんとか、第1波、第2波を切り抜けましたが、
ヨーロッパやアメリカはとんでもない被害を受け、
医療崩壊状態になった国もあります。
実際にその時、何が起こっていたのか?
今回はイタリアをアメリカの例を紹介します。
イタリア
イタリアは3月に感染爆発(オーバーシュート)を起こし、
医療崩壊を起こしました。
ロンバルディア州の総合病院の医師は
当時の様子についてこう語っています。
「病床がいっぱいで患者を断っている。
院内の別の場所で人工呼吸器を装着して待機させ、移送させる。
周囲の病院は同じ状態で、遠くに受け入れ先を探すしかない」と。
患者への付き添いは認められておらず、
家族の看取りがないまま亡くなる患者も多かったそうです。
生存の可能性が高い患者を優先して治療が行われ、
高齢で呼吸器に問題がある患者は、もうはじめから措置しない、
というケースもあったようです。
イタリアでは3月、医療現場のスタッフが足りなくなり、
引退した医師や看護学生も駆り出して治療に当たっています。
そして今、イタリアは第二波によって再び医療崩壊の危機に瀕しています。
病院に入れず、車の中で酸素吸入や治療を受ける人、
なんとか救急車で病院まで運ばれたものの、病院に受け入れてもらえず、
救急車の中でそのまま死んでしまう人もいるそうです。
アメリカ
4月にニューヨークの病院にボランティアとして参加した
日本人医師 讃井(さぬい)医師によると
ピーク時には1時間に3〜5人の重症患者が救急搬送されてきて、
常時40〜80人の患者さんが待っている状況だったそうです。
病室に収まりきらない患者は廊下。
ストレッチャーが10台、20台と並んでいた。
そんな中で一番足りなかったのは物資ではなく、
人だったそうです。
物資やシステムが壊れるわけではなく、
人が足りない。
人工呼吸器に乗せるところまではやれるけど、
そのあとの管理や回診もできなかったそうです。
これは4月の話ですが、
現在、アメリカは第三波の真っ只中にあり、
再び医療崩壊の危機に瀕している地域もあります。
あるお医者さんは連続勤務256日目、
看護師たちは昼間から泣きながら勤務しているそうです。
ちなみにアメリカやイタリアは医療体制が悪かったわけではありません、
アメリカは国民皆保険制ではありませんが、
イタリアは国民皆保険制、
両国とも日本と同等以上の医療水準の国です。
日本各地の状況
そんな世界の状況を踏まえて、
日本でも医療崩壊を懸念する声が上がっているのです。
全国で2000の重症者用のベッドが用意される
日本で医療崩壊することはない!
という専門家もいますが、
各地からは悲鳴が上がっています。
東京都
東京の小池都知事
11/25会見で
「25日は重症者が54人に急増していて、予断を許さない状況だ。
都民の命を守るため手段を尽くして重症化を防ぎ、
医療崩壊を何としても回避しなければならず、これが1番重要だ」
と言っています。
東京都は11/30の時点で70人の重症者がいます。
大阪府
大阪では11/30の時点で、重症者が21人増えて124人。
東京都よりも多くなっています。
そういう状況の中で
大阪市立総合医療センターは、
若年者向けのがん専用病棟を一時閉鎖すると発表しました。
新型コロナ患者の治療に当たる看護師が不足しているためだそうです。
吉村知事は
「病床の積み上げより、(新型コロナの)重症者が増えるペースのほうが速い」
「特定の病院で一時的に救急搬送を停止し、病床の選別をしないといけない」
と語っています。
よく「日本では医療崩壊なんて起こらないよ」とか
「マスコミが数字をとるために危機感をあおっているだけだ」
という人もいます。
しかし。小池都知事や吉村府知事はマスコミと違って、
市民の恐怖をあおったら、自分の自治体が混乱して、
景気が冷え込んでしまいますから、
現状で、過剰にあおるメリットはないと思います。
しばらく選挙も住民投票もないですしね。
北海道
北海道では「すでに医療崩壊しかけてる!」
という現場の悲痛な声が上がっています。
盲腸で発熱して救急搬送された患者さんが15ヶ所も病院をたらい回しにさせられたり、
人手不足のため、手術をストップしている病院があったりという状況だそうです。
日本医師会の中川会長は(北海道のお医者さんだそうですが)
早い段階から警鐘を鳴らし、政府の対応に疑問を唱えていました。
中川会長は
「国が公表している各地の病床使用率は、
準備が必要ですぐには使えない病床も含めて計算されており、
地域によっては満床状態だ。
まだ余裕があるように見えるかもしれないが、現場感覚とは著しいずれがある」
現実には医療スタッフの不足もあり、受け入れ可能病床は満床の状態だ」
と訴えています。
政府の現状認識、医師会の現状認識、そして各都道府県の発表と
少しずつズレがあり、どれが本当かはわかりませんが、
この1〜2週間が正念場ということは確かのようです。
日本は第3波も超えられるのか?
最後に、先ほどのあげたニューヨークで治療に当たった
讃井医師の言葉を紹介します。
「たしかに、日本では感染拡大の第一波は抑えられました。
注目すべき死亡者数を見ても、日本とアメリカでは桁が違います。
そこには、日ごろからの衛生意識、マスクをする習慣、所得格差、医療アクセス、
さらには血栓のできやすさなど、さまざまな因子が関係していると考えられます。
また、ウイルス株の変異を指摘する研究者もいます。
しかし、これら日米の違いは、日本における第二波の感染拡大の抑制を保証するものではありません」
実際に戦場のような病院で治療に当たってきた医師が
このように警鐘を鳴らしているわけです。
いろんな要因が言われているけど、
どれも決定的ではない。
日本は今回も大丈夫とたかを括ってはダメだよ、と。
そういうことでしょう。