熊本・鹿児島の豪雨災害、
すごい被害ですよね。
九州南部で起こった豪雨災害は
梅雨前線の北上に伴って九州北部にまで拡大。
そして、岐阜県や長野県でも
影響が出ることが心配されています。
温暖化の影響と言われているんですが、
最近、毎年のように豪雨災害が起こっていますよね。
まだ記憶に新しいところですが、
2015年に鬼怒川の氾濫
2018年の西日本豪雨
2019年の千葉県の房総半島台風
そして2020年現在進行中の九州豪雨。
これだけ毎年水害が起こっているのですが、
悲しいことに毎年逃げ遅れてしまったり、
何も行動できないままお亡くなりになってしまう方があとをたちません。
なぜ人は逃げ遅れてしまうのでしょうか?
今回は教員時代に心理学やコーチングを学んできた私が、
心理学的にこの理由と対策について説明します。
この記事を最後まで見ていただけると
災害の時に逃げ遅れしまう心理を知ることができ、
いざという時に正しい判断をすることができるようになります。
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正常性バイアス
まず最初に、人が災害から逃げ遅れる最大の原因。
それは「思い込み」です。
エー!?
思い込み!?
と思いますよね。
思い込みのせいで死んじゃうの?と。
でも、この思い込み、
あなどるなかれなんですよ。
心理学的にいうと思い込みのことを『バイアス』と言います。
人はものすごいピンチな状況におちいった時、
「大丈夫だろう」
と思い込んでしまうという性質があるんですね。
それを「正常性バイアス」と言います。
例えば、大雨で警報が出ていて
「近くの川が増水している」
と聞いた時、大体の人はこう思いますよね。
「いや、怖いね〜。でもまぁあふれたりはしないだろ」
この段階で
「やばー!!!!逃げなきゃ」って言って
急いで荷物まとめて近所の体育館に逃げ込む人ってあんまいないですよね。
下手したら体育の授業やってたりしてね。
変なおっさん乱入してきたで、みたいな、
白い目で見られたりして。
警報出ててもそんなレベルでしょ。
じゃあその後、ニュース映像で
もう、橋が飲み込まれそう、あと1mも増えれば土手を超えてしまいそう、
そんな映像が流れているのを見て、
それでもまだ逃げる人、少ないですよね。
避難指示とか言われたら、一応対象地域確認はするけれど、
自分の地域が入っていても
「やば〜、こわ〜」ぐらいですよね。
この段階でもまさかあふれるとは思っていない。
川の近くに住んでる人は、普通の人よりも普段から危機感を持っていますから
この段階で非難する人も多いかもしれません。
でも川から1kmも離れていれば、
もう他人事ですよね。
避難指示の対象地域になっている。
大雨特別警報、土砂災害警戒情報も出ている。
そういえばハザードマップには確かに危険地域って書いてあったかもしれない。
それでも多くの人は逃げないんですね。
なんでかって言うと、
「自分は大丈夫」
って思い込んでいるからです。
これを心理学では「正常性バイアス」と言います。
なんでそう思うかというと
「今まで大丈夫だったから」ですね。
これが最近、災害を経験した人だったらどうかというと、
おそらくちょっとしたことでも念のためすぐに避難しますよね。
なぜなら
「また起こるかも」と思うからです。
つまり、人間は今まで大丈夫だったことは
これからも大体大丈夫だろうと思い込んでしまうということです。
この心理作用にも理由はあるんですよ。
それは何かというと、
危機的な状況、特に命の危険って、
ものすごいストレスなんですよ。
なので、大雨が降るたびに
「もしかしたら川が氾濫して死ぬかも」
と本気で危機を感じて、
毎回毎回極度のストレスを感じて、逃げ回っていたら
もう精神がもたない。
だから、人間は多少のことなら
「大丈夫だろう」と判断してしまうようになっているんですね。
でも逆に、現代みたいに安全な環境に慣れてしまうと、
この正常性バイアスが強く働きすぎてしまうことがあるんです。
これが昭和中期ぐらいまでだったら
めちゃめちゃ大雨が降って
近くの川があふれそうだとなったら、
みんなすぐ避難してたと思うんですよ。
昔は川もすぐあふれたし、
台風で家が壊れるとかもよくあったので。
ところが現代は基本的に、治水もしっかりしているし、
住んでいる家が壊れるとかもほとんど起こらない。
その状況に慣れてしまっているんですね。
だから、何十年に一度の豪雨が降っても
「たぶん大丈夫だろう」
と思い込んで、危険を察知できないんですね。
ちなみに、今ニュースで
「何十年に一度の大雨」とかよく耳にするじゃないですか?
あれ、最近あまりにもよく耳にするので、
ちょっと過剰な、オーバーな表現なんじゃないかと思っていたんですが、
そうではないらしいですね。
本当に「何十年に一度の大雨」が降ってるらしいんですよ。
でもこれ逆にいうと、
今まで多くの人が何十年も経験したことがないようなことが起こっているということですよね。
なので、こういう場合には余計に「正常性バイアス」が働きやすい。
「何十年に一度の大雨」と言ってるのに、
「いや、俺が生まれてから、この川が氾濫したことなんて一度もない。
だから今回も大丈夫だろう」
と、そう思ってしまう人が多いということです。
東日本大震災の教訓
そもそも地震、洪水、火災の時にパッと逃げられる人って
めちゃくちゃ少ないらしいですね。
震度4とか、震度5の地震が起こりましたよっていう時、
パッと身を隠すとか、揺れが収まってから
急いで建物の外に出るという行動を取れる人って
ものすごく少ない。
今だったら大体みんなすぐスマホ開くんじゃないですかね。
揺れがおさまったら。
実はね、東日本大震災の時もそうだったらしいんですよ。
めっちゃ揺れて、揺れがおさまったら
「いや、すごい揺れだったな」
と言って、TVでもつけてそのまま家の中にいる。
警報がガンガン鳴って
緊急放送で「津波の恐れがあります、逃げてください」
ってガンガン言ってるのに逃げない。
で、ちょっと外出てみて、
他の人が逃げてるの見てようやく逃げるとか、
いざ水が迫ってきて、それを目にしてから必死に走るとか。
そういうことが結構起こったらしいんですよね。
それが一番最悪な形で起こってしまったのが、
宮城県石巻市の大川小学校。
2011年3月11日に起こった東日本大震災です。
当時、大川小学校では地震が起こったよということで、
小学生と教職員がグラウンドに避難した。
そして、津波に遭い、
児童78名中74名、教職員13名中10名が亡くなりました。
この事件は当時、教員だった私にとってもかなり衝撃的だったんですが、
今回改めて調べ直してみると、
本当に悲しい、調べながら涙が出るほどに痛ましい出来事でした。
大津波警報がガンガン出ていて、
保護者が学校に迎えにきて「津波が来るよ」と報告する中で
それでもこの学校の教員は子どもたちをその場にとどまらせた。
中には裏山に逃げた子もいたらしいんですが、
わざわざ連れ戻している。
迎えに来たお母さんたちにも
「いや、学校の方が安全です」
と言って引き留めてるんですね。
想定外の津波だったので、
こうなることは想定できなかったと言えばそれまでですが、
大津波警報が出ている中で
あえて子どもたちをグラウンドに引きとどめてしまった。
そして、戦後最大の学校事故に至ってしまったんですね。
「学校は安全、津波は来ない。なぜなら来たことがないから」
という思い込み、つまり正常性バイアスが警報を無視するという事態に至らせたということです。
これについて
「なんてバカな教員だ」
と批判するのは簡単です。
でも、多くの人は例えば大雨特別警報出てても無視しますよね?
そういう人はこれと同じ過ちを犯してしまう可能性はあるわけです。
それがこの正常性バイアスの怖いところなんですね。
これを教訓なんて言うには
まだ私たちにとって記憶に新しいし、
あまりにも悲しい記憶なんですが、
こういう過ちは二度と繰り返さないようにしたいですね。
利用可能性ヒューリティクス
最後に、
これと逆の働きをする心理作用を紹介します。
それは利用可能性ヒューリティクスという作用です。
ヒューリティクスというのは経験則のことなんですが、
じゃあこれどういう意味かというと、
「直近の印象的な事例から判断してしまう」という心理作用です。
例えば、
飛行機事故に遭う確率って、
いつ乗っても変わらないじゃないですか?
でも、
例えばフランスで飛行機事故が起こりましたよっていうニュースを聞くと
「いや、ちょっと最近怖いよね。飛行機キャンセルしとこうか」
という判断をしてしまう。
これは冷静に考えると明らかに論理の飛躍ですよね。
でも多くの人は普通にこういう判断をしてしまう。
これを災害に当てはめてみるとどうなるか?
例えば、
どこかで大きな地震が起こると
「いや、なんか最近怖いから、ちゃんと備蓄しておこう」とかいう行動につながる。
これはまぁ悪いことではないですよね。
冷静に考えると、
例えば、北海道で地震が起こったからと言って、
静岡で地震が起こる確率が上がるわけじゃないんですけどね。
悪い方に働くと
「いや、なんか最近怖いから、旅行キャンセルしよ」
「なんか最近地震多いから、そろそろ南海トラフ地震起きそうな気がする」
とかいう思い込みにつながる。
コロナショックのまっただなかで
「5月11日に地震が起こる」というデマが流れたのもまさにこれですよね。
コロナとかいろんなことが起こってるから、
次は地震が起きそうな気がするみたいなよくわからない論理の飛躍。
人間て合理的なように見えて
実はめちゃくちゃ非合理な生き物なんですね。
私は冷静で、客観的で、科学的な思考をしていると
多くの人は思っていますが、
実は多くの思い込みに支配されているんです。
なので、こういう判断ミスをよくしてしまいます。
ということで今回は「大災害から身を守るための心理学」というテーマでお送りしました。