実は今、アメリカ、大変な状況になっています。
日本ではあまり報道されていないようですが、
かなり大変な状況ですよ、本当に。
ミネアポリスで抗議デモが暴動に発展したり、
トランプ大統領がWHO脱退を表明したりと。
この背景にあるものはなんなのか?
それについて解説したいと思います。
アメリカの現状を知り、アメリカの未来を考えることは
世界の未来を考えることにつながります。
一緒に考えていきましょう。
ミネアポリス暴動
ご存じない方も多いと思いますので、簡単に解説します。
アメリカのミネソタ州ミネアポリスで5月25日、黒人男性が拘束時に白人警察官に首を圧迫されて死亡したという事件を機に抗議デモが起こり、それが現在は暴動にまで発展しているということです。
黒人男性はなんで殺されてしまったかというと、
スーパーで偽札が使用されたとの通報を受けて警察官が駆け付け、この黒人男性に手錠を掛けてうつぶせの姿勢で押さえ付けたそうなんですね。この際、白人警官が黒人男性の首を8分46秒にわたり膝で圧迫。
途中「息ができない」という訴えがあったが、それを無視。
動かなくなってからも執拗に首を圧迫し続けたということです。
この黒人男性が実際に偽札を使っていたかどうか、
白人警官に抵抗したのかどうかはわかりませんが、
そこは実はもう重要ではないんですね。
なんでかというと、
白人警官が黒人男性を不当に、過剰に弾圧する。殺しちゃったりする
っていう事件は今までにも何度も起こっているんですよ。
そしてその度に大きな抗議行動が起こっている。
だから、普通の感覚を持ってる警察官だったら絶対やらない。
めちゃくちゃ気を付ける。
警察官になる以上はそういう事件が起こったということも知ってるはず。
でもこの人はあえてやった。
全力で抵抗する人間の首を8分間も圧迫し続けるなんて、
普通はできないですよ。
間違ってやっちゃったなんてことはあり得ない。
そこをあえてやったということは
この人はちょっと精神に異常をきたしているか、
黒人差別主義者で力で黒人をねじ伏せてやろうという思想を持っていた。
そのどちらかということですよね。
だから問題になってる。
日本人にはちょっと信じられないことですが、
この人種差別問題というのは世界では根強く残っています。
自由の国アメリカでもそれは同じで、
社会システム上の差別はなくなっても、
人々の意識はなかなか変わらない。
日本でも「男だったらこれくらい我慢しろ」とか「女は早く結婚して子供産め」
って平気で言っちゃうマウントおじさんがいるのと同じ。
そして、今回もこの事件がきっかけになって、
抗議デモが起こり、デモが暴動に発展しています。
デモ隊は石や花火で抵抗、お店や公共施設への放火、警官との衝突を繰り返し、
警官隊はゴム弾、閃光弾、催涙ガスなどで鎮圧にあたっているそうです。
もう完全に暴動ですよね。
一番凄かったのは数千人のデモ隊が警察署に乱入して放火。警察署が炎上するという事件まで起こっています。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020053000118&g=int
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93538.php
これね、なんで今回、ここまで人々の怒りが爆発しているかというと、
それは今のアメリカの社会情勢が大きく関わっているように思います。
もちろん黒人差別への抗議という意味もありますが、
明らかに講義の範疇を超えていますよね。
アメリカ社会が受けた壊滅的な打撃
日本でも新型コロナウイルスで経済がストップしたことによって
ものすごく影響を受けている人も多いですよね。
6月1日現在、日本の新型コロナ感染者が約16,800人。
死者は約900人です。
それに対してアメリカは
感染者182万人。死者10.6万人。
ニューヨークだけでも36万人感染して、2.3万人死んでる。
これは世界でダントツに多いです。
ヨーロッパの国もひどいと言われていましたが、比じゃない。
日本は「ジャパニーズミラクル」と言われるほど奇跡的に感染を抑え込めた日本ですら、こんなに経済が停滞してしまっている。
そのことを考えると、アメリカ社会がどれだけの打撃を受けているか、
なんとなく想像することができるのではないでしょうか?
実際、失業率でいうと、
アメリカは失業者2050万人。失業率14.5%。
日本は189万人、失業率2.6%。
もうこれも明らかですよね。
とにかく日本なんて比じゃないぐらい深刻なダメージを受けている。
そして、
ここからがポイント。
なぜミネアポリス抗議デモが、暴動にまで発展したか?
コロナウイルスは王族だろうが、首相だろうが、ホームレスだろうが、
平等に襲ってくるわけですが、
もっとも深刻な被害を受けるのは貧困層です。
なぜなら、アメリカは国民皆保険制ではないので、
貧困層の人たちなんてほとんど保険に入っていない。
病気にかかっても病院に行けないんですね。
だから、4月に「原因不明」で死んだ人が例年よりも明らかに増えている。
これはなんでかというと、コロナにかかったけど、病院にも行けず、
よくわからないまま死んでしまった人がたくさんいる、そういう可能性があるということです。
実際、統計データでも黒人やヒスパニック系の方が死亡率が高かったそうです。
次に仕事の問題。
アメリカは日本なんかよりも簡単に労働者を解雇できます。
そして真っ先に解雇されるのは、アルバイト、パート、日雇い、派遣。
そして社会的な地位の低い人々です。
さらにいうと、アルバイト、パートの人たちは失業手当ても受けられない。
だから、コロナウイルス感染による健康被害と、
経済混乱による経済的な打撃と、
ダブルで、真正面からダメージを受けてしまっているのが、
貧困層の人々、その多くが黒人、移民たちなのです。
そういう人たちが
やり場のない怒りを抱えている。
中には混乱に乗じて略奪でもしなきゃやってられないという人もいる。
それがこのミネアポリス暴動の背景にあるのではないかと思います。
WHO脱退
さて、そんな中でトランプ大統領が5月29日、WHOからの脱退を表明しました。
トランプ大統領はずっとWHO批判を繰り返していましたが、
それがここに来てついに脱退まで来たかという感じです。
別に強制加入じゃないんで抜けてもいいとは思うんですよ。
でもアメリカは世界一の経済大国ですから、
本当にアメリカが抜けてしまったら、そんな国際機関はほとんど意味をなさないんじゃないかなと思いますが、まぁそれはさておき。
なぜトランプ大統領はここまでWHOを、そして中国を批判するのか?
それはですね、自らの失敗を隠すためですね。
トランプ大統領は2月までずっと
「大丈夫だ。コロナウイルスは完全に抑え込めている」
と言っていたんですよ。
そして今でも彼は絶対にマスクをしない。
日本でもよくいたじゃないですか。
「そんなん大したことねえんだよ。経済を止めるな」と威張ってたおじさん。
あんな感じだったんですよね。
それに対してニューヨークのクオモ知事は3月初頭に独自の非常事態宣言を出して対応に当たってきた。
実際、3月から感染者数は急増。
アメリカ国民は毎日、トランプよりも、クオモ知事の言葉を信じている。という事態にまでなっているそうです。
そこでトランプ大統領は態度を一変。
「中国からウイルスが持ち込まれた」
「武漢ウイルスに迷惑している」
「WHOは中国の言いなりだ」
と言い始め、中国やWHOを標的に定めるようになった。
…というわけです。
まぁトランプ大統領はもともと中国については嫌いだったんですよね。
それは政治的な理由というよりも、アメリカ経済の妨げになるから。
就任当初からアメリカファーストでやっていくと言っていますからね。
だんだんと中国包囲網をつくって、中国経済の首をしめ、
世界が中国から離れていくような戦略を練っていたと思うんです。
それが、大統領選、再選を視野に入れなきゃいけないこの時期に
コロナ対策でオオゴケしてしまった。
だから、ここに来て一気に攻勢を強めて、
WHO脱退というパフォーマンスに至ったということだと思います。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52840743