アメリカ大統領選で最近にわかに
『戒厳令』が話題になっています。
似たような意味の言葉として
日本でも緊急事態宣言が最近よく話題になっていますよね。
戒厳令と緊急事態宣言、そして非常事態、
これってどう違うの?
今回は元社会科教師の私が、
その違いや歴史についてわかりやすく解説します。
私は元社会科教師なので、
歴史とか、社会とか、政治経済なんかについて
わかりやすくまとめて皆さんにお届けしています。
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緊急事態と非常事態
まずはじめに緊急事態と非常事態についてですが、
これは全く同じ意味です。
日本では緊急事態宣言という制度があるため、
最近では『緊急事態』という言葉が
使われることが多くなりました。
が、コロナ以前は緊急事態、非常事態、
どちらも同じ意味で使われていました。
海外の場合は『非常事態宣言』とか
『非常事態』という言葉が使われることが多いです。
英語では「State of emergency」。
これは非常事態、非常事態宣言、緊急事態、緊急事態宣言、
いろいろな訳され方をしますが、どれも正しいです。
じゃあ、緊急事態/非常事態ってなんなのかというと、
災害とか感染症、大規模な事故、戦争、テロ、内戦などによって
国家が危機的な状況に陥っていることをいいます。
普段は平常時ですよね。
でも、何かが起こって、もう平常時じゃない。
危機的な状況なんだ!
となると緊急事態宣言/非常事態宣言が出されるわけです。
じゃあ、それが出されるとどうなるのかというと、
多くの国では緊急事態宣言/非常事態宣言によって、
国民の権利が制限されます。
例えば、海外の例をあげると、
外出禁止令、店舗の営業停止などです。
普段だったら国民は基本的人権が保障されていますよね。
どこに行こうが、何をしようがだいたいは自由です。
ところが緊急事態になると、
「そんなこと言ってる場合じゃなーだろ」
と言うことになって、
その権利が制限されちゃう。
現代社会でそんなことが可能なの!?
と思うかもしれませんが、
それは可能なんです。
例えば、戦争中。
戦争になってミサイルがバンバン飛んできている状況の中で
「俺には自由権がある!」
とか言われてもその人も死んじゃうし、
場合によっては他の人を危険にさらしてしまう可能性もある。
だから国家が
「うるせー、今はとにかく黙って言うこと聞け!」
と強制力を発揮することができるのが、
緊急事態宣言/非常事態宣言です。
日本はここ数十年、戦争とは無縁でしたが、
世界の多くの国はまだまだいろんなところで
ドンパチやってるんですよね。
だからこういう時代は現代でもよくあります。
日本の緊急事態宣言
では、日本の緊急事態宣言はどうなのかというと、
これがね、もう超貧弱なんですよ。
なんの権限もない。
ただ
「大変なことが起こりましたよ〜国民の皆さん」
「お願いだから、できるだけ外出しないでね〜」
ということしかできない。
そんな緊急事態宣言なんですね。
日本では4月に緊急事態宣言が出されましたが、
あれは『新型インフルエンザ等対策特別措置法』
という法律に基づいて出されたものなんですね。
感染症が大流行した時にどうするか?
を定めた法律です。
じゃあ、その法律に基づいて
緊急事態宣言が出されるとどうなるのか?
緊急事態宣言が出ると、
都道府県知事に以下の権限が与えられます。
・外出自粛要請
・休校要請
・店舗や施設の営業停止要請
・イベント中止の要請
・マスクの売り渡し要請
基本はすべて要請。
政府ができることはまぁはっきり言って特にありません。
海外みたいに強制的なロックダウンはほぼできません。
(解釈を拡大すれば一部可能かもしれません)
つまり、
「大変なことが起きたよ〜できれば知事のお願い聞いてね〜」宣言なんですよ。
でも日本人はバカ真面目だから
「えらいこっちゃ〜自粛自粛!」と言って
みんなで自主的に対策をとった。
それで第1波を切り抜けたんですね。
なんで日本の緊急事態宣言は
こんなに貧弱なのかというとそれは
ハッキリ言って民主党のせいです。
日本では2009年〜2012年に民主党が政権を取っていましたが、
その時に新型インフルエンザが流行って、
それでこの法律がつくられたんですね。
民主党は左翼政権ですから、
国家が強い権力を握ることを嫌います。
「憲法改正したら戦争になる〜」とか言って
過剰に恐れていますからね。
だから、国ではなく、都道府県知事に少しだけ権限を持たせて、
国は何にもすることができない、骨抜きの法律をつくったんです。
そのせいで日本は、緊急事態にまったく
対処できない国になってしまったというわけです。
アメリカの非常事態宣言
ちなみにアメリカではどうかというと、
アメリカは非常事態宣言がめちゃくちゃたくさん出ます。
ここ50年の間に60回以上、国家非常事態が宣言され、
現在も35個の非常事態が有効です。
大統領令として出されます。
例えば、最近では新型コロナウイルスについて全国緊急事態の宣言が出されたり、
あとはメキシコとの国境線について緊急事態宣言を出して、
だからメキシコとの国境に壁をつくる事業を進める!と宣言されたりしました。
もちろん、戦争やテロ事件が起こった時にも出されます。
大統領命令でかなり超法規的な措置がとれる強力な宣言です。
また各州知事も非常事態宣言を出すことができます。
コロナ禍では各州知事が出した非常事態宣言によって、
外出制限や営業制限が課されました。
日本のヘナチョコ緊急事態宣言よりも、
アメリカ州知事の非常事態宣言の方がよっぽど強力です。
戒厳令とは?
では最後に戒厳令とは何か?
最近、アメリカ大統領選を巡って、
トランプ大統領が戒厳令を出すのではないか?
という説が囁かれ始めました。
トランプ弁護団のメンバーであるリン・ウッド弁護士も
「大統領、戒厳令を出すべきだ!」と叫んでいます。
戒厳令とは、緊急事態宣言のさらに上の措置で、
国家の緊急時に、憲法や法律を停止し、
行政・立法・司法を軍隊が掌握するシステムのことを言います。
もう議会でワイワイ言ってる場合じゃない。
法律とか、人権とか言ってる場合じゃない。
国家がそれくらい危機的な状況におちいった時に、
戒厳令が出されます。
緊急事態宣言は国民の権利・行動を一部、制限することができましたが、
戒厳令はもう国の統治機構、政治システムそのものを緊急停止して、
事態を収集する。
そういうシステムです。
例えば、戦争、テロ、内戦、クーデターが起きた時などに発令されます。
民主主義、議会政治というのは、
多くの人の意見を取り入れられる代わりに
意思決定に非常に時間がかかるというデメリットがあります。
例えば、内戦が起こっている時に呑気に議会で話し合っていたら
自分たちが殺されてしまうかもしれないですよね。
そういう緊急時にはもう、民主主義はストップせざるを得ないのです。
よく聞くところではタイですかね。
反政府デモが激化して、2006年と2014年に戒厳令が出され、
軍隊が政治を掌握しました。
日本では戒厳令の制度はありません。
戦前にはありました。
日比谷焼打事件、関東大震災、二・二六事件の時に
戒厳令が発令されました。
アメリカで戒厳令が出される?
最後に、アメリカの戒厳令について。
アメリカでは非常事態宣言がとても強い力を持っていて、
かなり乱発されていますが、
戒厳令というのはほぼ出されていないようです。
私が調べた範囲では南北戦争の時だけかな。
なぜかというとアメリカは1861年の南北戦争以降
内乱が起こったことがなく、
また今まで真珠湾攻撃、9.11テロ事件以外に、
外国からの直接攻撃を受けたこともないからです。
民主政治を緊急停止させるような事態に
なったことがない。
でもリン・ウッド弁護士が言うように、
大統領が『これは国家の危機である』と判断した時には
大統領権限で戒厳令を出すことができるようです。
大統領権限のひとつに
緊急事態には大統領は憲法や法律の条項を停止することが
できるという権限があるからです。
これはトランプのワガママではありません。
選挙で選ばれた大統領の権限ですから、
少なくとも2021年1月19日まではトランプはこの権限を持っているのです。
今、アメリカは大統領選で揺れに揺れています。
トランプは
「民主党は外国勢力と結託して選挙を不正にのっとった」
と主張しています。
アメリカ政府内部でも対立があり、
米軍とCIA、FBIなど、武装組織の間でも対立があるようです。
もちろん、各党支持者や右翼、左翼の間でも対立が起こっています。
これがもう内戦状態だ、
国家の危機的な状況だとトランプが判断すれば
戒厳令が発令される可能性があるのです。
そうなったら、権力を掌握するのは
アメリカ軍の最高司令官である大統領です。
そして、議会や通常の裁判が停止されたり、
民主党関係者や不正を行っていたとされる容疑者たちが
バンバン拘束され、軍事裁判にかけられる。
そういう事態になっていく可能性すらあるのです。
今実は、アメリカはこういう状態にあります。
ということで、今回は元社会科教師の私が
戒厳令と緊急事態宣言の違いについて動画をお送りしました。