今、アメリカと中国は経済戦争、貿易戦争
そしてテック戦争の真っ只中にあります。

貿易戦争、経済戦争を踏み越えたら
軍事衝突になり、そこをさらに超えると実際の戦争になるわけですが、
今はまだそこの前の前の段階ぐらいです。

そのテック戦争の中で一番注目を集めていたのが、
TikTokですね。

ファーウェイの禁止が第一ラウンドだとしたら、
今回のTikTok騒動は第二ラウンドです。
まだまだ戦いは続くでしょう。

7月から続いていたTikTok騒動は
最近になってようやくまとまりそうです。

TikTokがオラクルと業務提携して
新しい会社を立ち上げるということです。

最近、これについてまた中国政府がイチャモンをつけてきたり、
トランプ大統領も文句を言ったりはしていますが、
大筋は決まりでしょう。

実はこのTikTok騒動、
表面的に見ると、TikTokがどうなるか?
というだけの話なのですが、
実はそんなに小さな話ではありません。

世界の今後を運命付けるような
大きな事件なのです。

ということで今回は『TikTok騒動の裏側』というテーマでお送りします。

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売国奴と呼ばれた人たち

本題に入る前に、
TikTokの創業者について少しだけ話します。

日本やアメリカでTikTokを危険視している人たちは、
中国企業は、中国共産党政府とつながっている。

だから、
中国企業は危険だ!
中国企業は中国政府に情報を渡している!
中国企業は中国政府と結託して、我々の個人情報を集めている!

と言います。

ところが
TikTokの創業者、
張一鳴(チャン・イーミン)という人なんですが、
この人、中国でなんと呼ばれているかご存知ですか?

『売国奴』

ですよ。

つまり、中国共産党に協力せず、
アメリカにすり寄って商売している汚いやつ、
と中国政府やその周りの人たちから睨まれているわけです。

あれ?

話が違うやん、と。
え、そこ結託してるんじゃないの?と思いますよね。 

ちなみに、ちょっと話はそれますが、
アメリカからコテンパンに叩かれているファーウェイ。

ファーウェイも頑なに中国政府とは距離を置いています。
一時はアメリカ企業に身売りしようとしたほどです。

あれ?

話が違うやん、と。 

私たちはこういう事実を知らずに、
アメリカ政府やアメリカメディアが流す情報を、
鵜呑みにして

「中国怖い」
「中国企業怖い」

と全て一緒くたにしてビビっています。

本題に入る前に、
ちょっとまずはちょっとだけ
視点を変えて見る訓練をしてほしいです。

TikTok騒動の前夜

それでは本題に入ります。

TikTokの運営会社バイトダンス社は
2017年からTikTokの本格的な世界進出を開始します。

2018年には世界中で5億人のユーザーを獲得し、
世界でもっとダウンロードされたアプリに輝きます。

しかし、2019年ごろからセキュリティ面での問題や、
中国政府との関わりなどに対する懸念の声が挙げられるようになります。

バイトダンスの創業者
張一鳴(チャン・イーミン)は、
中国では「売国奴」と呼ばれるほど
中国共産党と距離を置いている人物です。

もちろん、中国企業であるからには共産党に配慮しなければ
ならない面はあるとは思いますが、
恐らく本気で世界一のSNSにすることを目指していたのでしょう。

セキュリティ面や政治的な問題の解決に本気で動いていました。

まずサーバーをシンガポールとアメリカに置き、
中国の支配を断ち切りました。

2020年6月には
元ディズニー幹部、ケビン・メイヤーをCEOとして招き、
7月には運営会社をイギリスに移転させるため、
イギリス政府との交渉をはじめました。

そんな中で、
インドと中国の間で国境紛争が起こって、
インドでの使用が禁止されたり、
反中派で知られるポンペオ国務長官が
「TikTokの禁止を検討している」
と発言したりして、少しずつ逆風が吹き始めました。

TikTok禁止の大統領令

そんな流れの中でトランプ大統領は
8/6、45日後からTikTokを禁止するというような大統領令を出します。

アメリカ企業に売却するか、
もしくはアメリカから出ていくか、
45日以内にどちら選べということです。

トランプは必死に体制改革に取り組んで
なんとか解決の糸口を模索していたTikTokに対して

「禁止されるか、買収されるか選べ」
と言っているんです。

でも、そもそも考えてみてください。
TikTokとしては禁止されたくないから
売国奴と言われようがなんだろうが改革に取り組んできたんですよね?
禁止されたくないに決まってますよ。

嫌でもなんでも、買収の道を探るしかありません。

しかも、現状、TikTokの経営は赤字なんですね。
なぜなら世界では収益化プログラムが
まだ実施されていないからです。

でも、このままいけば数年後には莫大な利益を生み出す
プラットフォームになる。
バイトダンスはそれを見越して、売国奴と言われようがなんだろうが、
先行投資して、経営改善に努めてきたわけです。
それをドブに捨てるようなことは絶対できない。

トランプ氏はそれを分かった上で
大統領令にサインしているのです。

つまり、もう最初から勝つことが決まった上で
交渉しているというか、圧力をかけているんですね。

勝つことが決まっているのに
さらにそこに爆弾を落として追い込むというのは
アメリカの常套手段です。

日本の自動車メーカーをいじめたり、
敗戦が確定している日本に原爆を落としたたりしたのと同じ手法です。

6/1 元ディズニー幹部のケビン・メイヤーがCEOに就任

6/20 TikTokerらによるトランプ の選挙集会妨害事件

6/29 中印国境紛争の影響で、インドでTikTok等が禁止

7月 バイトダンスの本社をイギリスに移すため、イギリスと交渉中と発表

7/6 TikTok、国家安全維持法の制定を受けて、香港市場から撤退

7/6 マイク・ポンペオ米国務長官が、TikTokを含む中国のアプリの禁止を検討していると発表

7月下旬 トランプ大統領「TikTokを禁止にするつもりだ」と発言

7/28 自民党甘利氏ら、TikTokを念頭に中国発アプリの利用制限を政府に提言すると発表

7/31 トランプ大統領「TikTokを禁止する」大統領令に署名すると発言

8/4 MicrosoftがTikTok買収交渉開始

8/6 トランプ大統領、TikTokとWeChatの運営企業との取引を、45日後から禁止する大統領令に署名

8/22 バイトダンス社が米政府を提訴

8月中旬以降 Twitter、ウォルマート、ソフトバンクも買収交渉に参入

8/26 ケビン・メイヤー辞任

8/28 中国政府、AIなどのIT技術を輸出制限の対象リストに追加

9/13 マイクロソフトとの交渉が破談、オラクルとの提携を目指すと発表

9/14 米政府、オラクルとの提携案を受理

9/18 米商務省、TikTokのダウンロードと、WeChatの使用を、20日から禁止するよう命令

9/19 トランプ大統領、オラクル との提携案を承認
米商務省は19日、ダウンロード禁止措置の発動を27日まで1週間延期すると発表

オラクル との業務提携

そして、
それから、マイクロソフト、ウォルマート、Twitter、ソフトバンクなどが
次々にTikTok買収に名乗りをあげてきます。

しかし、バイトダンスは表ではそれらの企業と交渉を重ねながら、
裏では別の企業に近づきます。

それがオラクルです。

アメリカIT企業の多くは『反トランプ派』です。

しかし、オラクルは珍しく『トランプ派』なんですね。
トランプからしたら、絶対に失いたくない支援者の一人です。

そこに接近していったわけです。

恐らくマイクロソフトも最有力候補だったとは思うのですが、
あとはオラクルとマイクロソフトを天秤にかけて、
よりトランプを抑えてくれる方を選んだ結果、
最終的にオラクルが選ばれたというわけです。

オラクルが出てきたことによって、
最初は「買収か、撤退か」そのどちらかしか認めない、
というような態度だったトランプはいきなり態度を軟化させます。

そして、最終的な案としては

①「ティックトック・グローバル」という新会社を立ち上げ、
バイトダンスが80%、オラクルが12.5%、ウォルマートが7.5%出資する。

(バイトダンスの株式の41%を米国の投資家が保有しているため、
この間接的な保有分を考慮すれば、新法人は株式の過半数を米側が保有するという理屈)

②TikTokユーザーのデータはOracleのデータセンターに移管される。

③5人の取締役中4人が米国人になる。

④新会社は米国で2万5000人以上の新規雇用を創出する。

⑤50億ドル以上の税金を米財務省に支払う。

という条件で、
この案はほぼ認められました。

すごい案ですよね。

株式の20%をアメリカ様にお譲りします。
アメリカ人を25000人雇わせていただきます。
毎年5000億円を納めさせていただきます。
だからこれからもアメリカで商売させてください。

っていう案でまとまるって…。

こんなのまるでミカジメ料を納めさせていただきますので、
どーぞあなた様の縄張りで商売をさせてくださいませ
って言ってるようなもんじゃないですか。

しかも、この最終案を見ると
あれ?セキュリティ問題ってあんま重要じゃなかったんじゃない?
と思わざるを得ませんよね。

TikTokを脅した2つの理由

じゃあ結局、アメリカがTikTokを禁止した理由はなんだったのか?

それは3つあります。

1)セキュリティ上の問題

2)アメリカの利益を損なうから

3)アメリカが情報を盗めないから

です。

1)セキュリティ上の問題

まず初めに、セキュリティ上の問題が挙げられています。

確かに、TikTokのセキュリティやコンプライアンスは
欧米基準で考えるととても低いものでした。

例えば、2019年11月まで、
アンドロイド端末から携帯の識別番号を不正に取得していたり、
クリップボードの内容を不正にコピーしていたりということは
明らかになっています。

また、アプリの使用にあたって電話番号や位置情報など、
情報の提供が求められたりもします。

これには中国のセキュリティ意識の問題が原因でしょう。
中国人はサービスがより便利になるためだったら
信用情報や個人情報を喜んで差し出すそうです。

なので、企業が個人情報をたくさん、自動で集めようとするのは
ある意味、中国人にとっては当たり前のことなのでしょう。

そして、バイトダンスはこれらの問題が指摘された後は
その問題点を改善しています。

もうひとつは、中国共産党とのつながりについてです。
中国には『国家情報法』という法律があります。

これによると、中国人は(国内国外に関わらず)
「中国政府の情報活動に協力しなければならない」
と定められています。

つまり、
中国当局が「情報をよこせ」と言ったら、
渡さないといけないということです。

だから、怖いと。

しかし、よく考えてみてください。

みなさんがIT企業の社長だとして、
いきなり日本の検察とか警視庁特捜部とかが会社に踏み込んできて
拘束されて丸裸にされて
「捜査のために情報を提出しなさい」
と言われたら、拒否できますか?

拒否できないでしょうよ。

そんなのはどこの国でも同じです。

現にLINEだって、
韓国政府に情報を渡していることが発覚しましたが、
全くLINEを禁止にする風潮はありません。

2)アメリカの利益を損なうから

TikTokが目をつけられた第一の理由はこれです。
セキュリティの問題は後付けに過ぎません。

その証拠に、
提携案のほとんどは、要は「アメリカに利益をよこせ」という内容ですよね。

セキュリティ面はサーバーをオラクルが管理するという点だけ。

そんなんで良かったのなら新会社を立ち上げないで

「サーバーはアメリカの会社に管理させなさい」

で、済んだはずです。

なぜ、TikTokが台頭するとアメリカの不利益になるかというと、
バイトダンスは中国企業だからです。

中国企業はアメリカの富を奪うばかりで、
アメリカに税金も納めないし、
アメリカ人を雇用することもない。

だから、
アメリカ以外のSNSがアメリカで流行ることは
アメリカにとって不利益なのです。

FacebookやGoogleなどもアメリカ政府から目の敵にされることは
よくありますが、それでも中国に比べたら味方です。

まだアメリカに多少なりとも利益をもたらします。

これが小さなサービスだったら
まだ目をつぶってくれたかもしれませんが、
TikTokは今や世界で20億回ダウンロードされ、
アクティブユーザーも5億人以上いるアプリです。

Facebook 20億人、Instagram 10億人にはまだ及びませんが、
Twitter 3億人はとっくに抜いています。

そしてこのままの勢いで行けば
数年後には世界一のSNSになると言われています。

今まで、
アメリカ産以外のSNSが世界に広まったことは一度もありませんでした。

Facebook、Instagram、Twitter、
世界に広まっているSNSは全てアメリカ産です。

これからの時代、
ビッグデータを握っている企業が勝利すると言われています。
だから、GAFAが世界のトップ企業になったんですね。

そこにいきなりアメリカ以外の、
アメリカがコントロールできない企業がいきなり出てきて、
世界を席巻してしまうことはアメリカ経済にとって不利益になるということです。

3)アメリカが情報をつかめないから

二つ目の理由はこれです。

そもそも世界一の諜報国家はアメリカです。

PRISMというシステムで
Facebook、Twitter、Google、YouTubeなどから
個人情報を抜き取っていることが
公になっています。

メルケル首相の電話を盗聴していたことも
ドイツ政府から公に抗議されています。

ところが、
中国系アプリは米国国家安全保障局(NSA)が情報を盗み出せないんですね。
だからアメリカは困ってる。

6/20に行われたトランプ大統領の選挙集会では
事前に「100万人を超えるチケットの申し込みがあった」そうなんですが、
実際にはわずか6,200人しか集まらなかったそうです、

なぜかというと、
TikTokユーザーらが、集会を妨害する目的で、
嘘の予約を入れまくっていたからだと、
トランプ陣営は発表しています。

ちなみに中国としては
民主党のバイデン氏が大統領になるよりも
トランプ氏が大統領でいてくれた方が都合が良いので
これは中国の工作ではなく、
民主党支持のアメリカ人がやったことです。

今回は選挙集会だったからまだ良かったものの、
これは悪用しようと思えばいくらでも悪用できるなと。

そして、その情報をアメリカ当局が全くつかめないぞ、
ということをこの一件で思い知らされたわけですね。

こういった理由で、
トランプはTikTokにイチャモンをつけて、
脅しをかけて、金を巻き上げたわけです。

TikTok騒動で決まった未来

今回のTikTok騒動は、
実はTikTokが買収されたされないの小さな問題ではありません。

今回の騒動を通して、
米中の経済対立、
米中テック戦争の未来が、決まったと言っても過言ではありません。

最初にも言った通り、
TikTokの創業者 張一鳴(チャン・イーミン)は、
アメリカの、そして世界の信頼を得るために涙ぐましい努力をしてきました。

そのせいで中国国内では
売国奴とも言われてきましたが、
それでもアメリカ人のケビン・メイヤーをCEOにしたり、
サーバーをアメリカとシンガポールに移したり、
セキュリティの問題が指摘されたらすぐに改善したりしてきました。

従来の攻撃的な、強気な中国企業とは違うのです。

そして、TikTokはアメリカ国内でも支持されてきました。
アメリカの若者の52%以上は「TikTok禁止に反対」と言っています。

ダウンロード禁止が通達されると、
駆け込み需要で一気にダウンロードが増え、
またダウンロード数は首位になりました。

それでも、
アメリカ政府は絶対に認めないのです。

中国企業、中国製アプリはどんなに努力しても
アメリカ政府のいうことを聞かない限りは、
ぶっ潰されるということです。

アメリカにミカジメ料を払わない限りは商売できないということです。
そして、西側諸国もそのアメリカの動きに便乗してくるということです。

それが今回の一件でハッキリした未来です。

中国企業は今後、実質、
西側諸国への進出は諦めて
中国中心の経済圏の中で商売していくしかないでしょう。

アリババなど、他の中国テック企業も
今回の騒動を見て、アメリカ進出を諦めることでしょう。

TikTok騒動の本当の狙い

さて、最後に、
TikTok騒動の本当の狙いについてお話しします。

ズバリ言いますね。

TikTok騒動の本当の狙いは

『WeChatの禁止』

です。

TikTokなんてアメリカからしてみたら
単なる前哨戦です。

そのドサクサに紛れて
アメリカがやったこと。

それはWeChatの禁止でした。

これはほぼなんの猶予もなく、
なんの選択の余地もなく、なんの理由も言わずにズバッとやりました。

WeChatとは、
LINEとLINE PayとFacebookがくっついたようなアプリです。

中国人はもちろん、
中国とやり取りのある人はほぼ全員入れています。

日本人がみんなLINEを入れているような感覚です。

このWeChat、何が問題なのかというと、
先ほどもちょっと言いましたが、
アメリカ政府、米国国家安全保障局(NSA)が情報を盗み取れないからです。

中国製のアプリなので、
この中でやりとりされてしまうと、
情報も抜き取れないし、お金の流れも把握できない。

実はそれを利用して、
黒人差別反対デモを煽動している人たちがいるのです。

普通にやりとりしたら情報は筒抜けですが、
WeChatでやりとりすれば、アメリカ政府から傍受されることはありません。

そこをついて、
デモを煽動して、暴力行為を働いたり、煽ったり、支援したりしている人たちがいる。

アメリカ政府はそこを一番恐れたようです。

でも、
そんなこと公に言えないですよね。

「メッセンジャーでやりとりしてくれれば、アメリカ政府が情報を盗み取れるが、
WeChat内でやりとりされると盗み取れない。
だから禁止します」

なんて。

しかも、WeChatを運営しているテンセントは
バイトダンスとは真逆で中国共産党にベッタリの企業です。

そういう面での懸念もあります。

だから、
TikTokのどさくさに紛れてやった。
理由もよくわからない。

そういう背景があるようです。

ということで、
今回の一件を機に、
インターネット、SNSの世界は
アメリカ陣営と中国陣営でますます分断が進んでいくでしょう。

日本はアメリカにくっついて、
中国のご機嫌も見つつ、やっていくしかないですが、
表面的なところに惑わされず、
ぜひ広い視点から情勢を見ていってもらえたらなと思います。

今日の情報は現在進行中の内容なので、
今後、大きく自体が変わっていく可能性もあります。

まだまだ注目していきましょう。